Amazonビッグセールに備える広告予算設計マニュアル|TACOSを基準に予算・入札を調整する方法


吉原 香奈
Amazon専任コンサルタント
大学卒業後、大手インターネット広告代理店に入社し、デジタル広告運用の最前線で実務経験を積み、データドリブンな戦略立案と分析スキルを習得。その後、しるし株式会社に入社し、Amazon事業部にて化粧品・ヘアケア・食品・家電・医療用品など幅広いカテゴリのブランドのECモール運用を担当。2025年よりAmazonチームのマネージャーとして、戦略設計から施策の立案・実行までをリードし、ブランド価値の最大化にコミット。

監修者
吉原 香奈
Amazon専任コンサルタント
大学卒業後、大手インターネット広告代理店を経て、しるし株式会社のAmazonチームのマネージャーに就任
Amazonのプライムデーやブラックフライデーなどの大型セールに向けて、広告予算をどう確保し、入札額や掲載枠をどう調整するかを解説します。TACOSを使った予算計算例、セール前・中・後の運用手順、確認チェックリストまでまとめました。
Amazonの大型セールでは、通常時よりも検索数と購入意欲が高まりやすくなります。一方で、多くの広告主が同時に入札を強めるため、通常と同じ予算・入札額のままでは、予算切れや掲載位置の低下が起こりやすくなります。
大切なのは、単純に広告費を増やすことではありません。販売予測、値引き後の売上、粗利、目標TACOSを整理し、「いくらまで使えるか」「どのキャンペーンに使うか」「セール中に何を見て調整するか」を事前に決めることです。

Amazonのビッグセールで広告予算を増やすべき理由
セール期は広告費とクリック単価が上がりやすい
ビッグセール期は、競合も広告予算や入札額を引き上げます。その結果、通常時に確保できていた検索結果上部の掲載枠を、同じ入札額では取りにくくなることがあります。
2023年のPrime Day週における通常時との比較例として、次の数値があります。
| 広告タイプ | 広告投資額の平均増加率 | CPCの平均増加率 |
|---|---|---|
| スポンサープロダクト広告(SP) | 2.32倍 | 1.40倍 |
| スポンサーブランド広告(SB) | 2.17倍 | 1.19倍 |
| スポンサーディスプレイ広告(SD) | 2.98倍 | 1.51倍 |
これらは特定期間の参考値であり、毎回同じ倍率になるわけではありません。ただし、「セール期は広告費とCPCが上がりやすい」という前提で準備する必要があることは読み取れます。

予算不足はセール後の売上にも影響する
セール中に広告露出を十分に確保できると、販売個数が増え、その後の自然検索順位や売上のベースアップにつながる可能性があります。
反対に、セールへ参加していても広告予算が早い時間に切れたり、主要キーワードで露出できなかったりすると、競合商品に販売実績を積まれやすくなります。その結果、セール後の売上差が広がることもあります。

まず決めるべき「攻め」と「守り」の運用方針
広告予算を決める前に、自社が今回のセールで何を優先するかを決めます。運用方針は、大きく「攻めの型」と「守りの型」に分けて考えると整理しやすくなります。
売上・顧客基盤の拡大を狙う「攻めの型」
攻めの型は、セールをきっかけに売上高や販売個数を伸ばし、購入者やリピーターの母数を増やしたい場合に向いています。
主な考え方は次のとおりです。
- 主力商品・主要キーワードの予算を大きめに増やす
- 検索結果上部など、成果の高い掲載枠を積極的に取りにいく
- セール中の利益率だけでなく、セール後の売上や自然検索順位も含めて評価する
- 新規顧客獲得や販売実績の積み上げを重視する
ただし、売上が伸びても粗利が残らなければ、資金繰りを圧迫します。攻める場合も、広告費の上限と撤退ラインは決めておきます。
利益と手元資金を重視する「守りの型」
守りの型は、セール中の利益額や手元資金を確保したい場合に向いています。
主な考え方は次のとおりです。
- 入札額は維持、または少額の増額にとどめる
- 利益率の高い商品や成果が安定しているキャンペーンへ予算を集中する
- 採算の合わないキーワードや商品ターゲティングは無理に追わない
- 日次で粗利とTACOSを確認し、上限を超えたら調整する
「すべてのキャンペーンを同じ割合で増額する」のではなく、商品ごとの利益率や目的に合わせて差をつけることがポイントです。
TACOSを基準に広告予算を計算する方法
TACOSとは
TACOSは、広告費が総売上高に対してどの程度を占めているかを見る指標です。
TACOS(%)= 広告費 ÷ 総売上高 × 100
ACOSが「広告経由の売上」に対する広告費を見るのに対し、TACOSは自然検索やリピート購入などを含む「総売上高」を基準にします。セールによって広告以外の売上も伸びる可能性があるため、全体の事業採算を確認する際に使いやすい指標です。
Step1 通常時の売上・広告費・粗利を確認する
まず、直近の通常期間から基準値を集めます。最低限、次の項目を確認してください。
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| 総売上高 | 広告経由・自然検索経由を含む売上 |
| 広告費 | SP・SB・SDなどの合計広告費 |
| TACOS | 広告費 ÷ 総売上高 |
| 販売個数 | 商品別・日別の販売数 |
| 粗利 | 値引き、原価、Amazon手数料などを差し引いた利益 |
| 予算切れの時間 | 何時ごろ予算上限に達しているか |
通常時の数字が曖昧なままでは、セール時に増額すべき金額も判断できません。商品単位とキャンペーン単位の両方で整理します。
Step2 セール中の販売個数を予測する
過去のセール実績、直近の販売数、セール対象商品の値引き率、在庫数をもとに、販売個数を予測します。
予測は1パターンだけでなく、次の3段階を用意すると判断しやすくなります。
| シナリオ | 想定 |
|---|---|
| 保守 | 通常時の1.2〜1.5倍程度 |
| 標準 | 過去の類似セール実績を基準にする |
| 強気 | 十分な在庫・値引き・露出がある場合 |
倍率はカテゴリや商品によって大きく異なります。過去実績がない場合は、強気の数字をそのまま予算化せず、途中で増額できる余白を残します。
Step3 値引き後の実質売上高と粗利を計算する
セールでは販売個数が増えても、値引きによって1個あたりの売上と粗利が下がります。広告予算は定価ベースではなく、値引き後の実質売上高から計算します。
値引き後単価 = 定価 ×(1 − 値引き率)
実質売上高 = 値引き後単価 × 予測販売個数
粗利 = 実質売上高 − 原価 − Amazon手数料 − クーポン等の負担 − 広告費
Step4 目標TACOSから広告予算上限を逆算する
広告予算の基本式は次のとおりです。
広告予算上限 = 値引き後の総売上高 × 目標TACOS
例えば、次の条件で広告予算を考えます。
- 定価:100円
- 原価:30円
- 値引き率:15%
- 通常時の販売個数:100個
- セール時の予測販売個数:200個
- 目標TACOS:10%
通常時は売上高10,000円に対し、広告予算は1,000円です。セール時は15%値引き後の単価が85円となり、200個販売すると実質売上高は17,000円です。目標TACOSを10%とすると、広告予算上限は1,700円になります。

この例では、販売個数が2倍になっても広告予算は単純な2倍ではなく、値引き後の売上を基準に1.7倍となります。
ただし、最終判断では広告費だけでなく、Amazon手数料、配送費、クーポン負担、ポイント負担などを含めて粗利が残るか確認してください。
Step5 キャンペーンごとに予算を配分する
算出した広告予算を、すべてのキャンペーンへ均等配分する必要はありません。目的と優先順位に応じて分けます。
| 優先度 | 配分先 | 判断基準 |
|---|---|---|
| 高 | 主力商品・主要キーワード | 売上と利益の中心で、在庫も十分 |
| 中 | 関連キーワード・商品ターゲティング | 一定の成果があり、拡大余地がある |
| 低 | 新規キーワード・テスト枠 | 学習目的。使い過ぎない上限を設定 |
| 予備 | 途中増額用のバッファ | 予算切れや好調キャンペーンへ追加 |
予算配分表には、少なくとも「現行予算」「セール前予算」「増額率」「担当者」「通常値へ戻す日」を記録します。
セール前に行う広告設定
未使用予算を使った自動増額を設定する
キャンペーンの支出が1日の予算を下回った場合、未使用額を使って同じ月の別日に1日の予算を増やす設定があります。
設定を使う場合は、管理画面の「設定」から、未使用予算を使った1日の平均予算の引き上げを確認します。設定画面では、未使用予算を使って1日の平均予算を引き上げる選択肢を確認できます。

この設定は予算切れ防止に役立つ一方、想定より支出が増える可能性があります。月間上限、請求タイミング、粗利への影響を確認したうえで利用してください。
複数キャンペーンの予算を一括変更する
キャンペーン数が多い場合は、1件ずつ修正するよりも一括操作が効率的です。
操作は次の流れです。
- 変更したいキャンペーンへチェックを入れる
- 「一括アクション」を開く
- 「予算を調整」を選ぶ
- パーセントまたは金額で増減方法を指定する
- 対象件数と変更内容を確認して保存する

一括変更前には、キャンペーン名、商品、利益率、現在の予算を一覧で確認します。利益率の低い商品や在庫が少ない商品まで一律で増額しないよう注意してください。
主要ターゲティングの入札額を一括調整する
広告グループやターゲティング単位でも、複数項目を選択して入札額をまとめて変更できます。
主な調整方法は次のとおりです。
- 入札額を一定額引き上げる・引き下げる
- 入札額を一定割合で引き上げる・引き下げる
- 指定した金額へ一括設定する
- Amazonの推奨入札額を適用する

推奨入札額は参考情報として使い、自社の粗利や目標TACOSを超えない範囲で設定します。
セール中の確認と調整方法
主要キーワードの掲載位置をシークレットウィンドウで確認する
セール中は、主要キーワードで自社商品がどの位置に表示されているかを確認します。通常のブラウザでは閲覧履歴やログイン状態の影響を受ける可能性があるため、シークレットウィンドウで確認すると状況を把握しやすくなります。

確認時は、次の点を記録します。
- 検索結果1ページ目に表示されているか
- 検索結果上部の広告枠を取れているか
- 自然検索順位は何位か
- 競合商品の価格、クーポン、レビュー数
- PCとスマートフォンで表示差がないか
掲載位置は利用者や地域、端末などによって変わるため、1回の検索だけで断定せず、時間を変えて複数回確認します。
掲載位置が弱い場合は入札額を調整する
主要キーワードで掲載位置を取れていない場合は、まずターゲティング単位の入札額を確認します。
調整前に、次の順で原因を切り分けます。
- キャンペーンが予算切れしていないか
- 広告対象商品が在庫切れ・カート未獲得になっていないか
- 入札額が競争水準より低くないか
- キーワードと商品ページの関連性が弱くないか
- クリック後の転換率が低下していないか
予算切れが原因なら予算を増やし、入札額が原因なら主要ターゲティングのみ増額します。成果の低いキーワードまで一律に引き上げないようにします。
取りたい掲載枠が明確な場合は掲載枠調整を使う
特定の主要キーワードで検索結果上部を取りたい場合は、掲載枠ごとの入札額調整を検討します。
主な調整方法は次の2つです。
- ターゲティング単位の入札額を調整する
- 検索結果上部、その他の検索結果、商品ページなど、掲載枠ごとに入札額を調整する

掲載枠調整は、基礎入札額に対して上乗せされるため、実際に支払う可能性がある入札額を事前に計算します。上部枠を取りたい理由が曖昧な場合は、まず少額で試し、売上・CPC・転換率を確認します。
予算切れ・TACOS・粗利を日次で確認する
セール中は売上だけを見ず、次の項目を同じ表で確認します。
| 項目 | 確認ポイント |
|---|---|
| 広告費 | 予定より速く消化していないか |
| 予算切れ | 何時に配信が止まったか |
| CPC | 通常時よりどの程度上昇したか |
| 広告売上 | 広告経由の売上が伸びているか |
| 総売上高 | 自然検索を含む売上が伸びているか |
| TACOS | 目標値の範囲内か |
| 粗利 | 値引き・広告費を差し引いて利益が残るか |
| 在庫 | 売り切れリスクがないか |
調整は、売上が悪いからすぐに止めるのではなく、予算切れ、掲載位置、商品ページ、価格、在庫などの原因を確認してから行います。
セール後に行う振り返り
増額設定と入札額を通常値へ戻す
セール終了後も増額設定を残したままにすると、通常時の転換率に戻ったあとも高い広告費を使い続ける可能性があります。
あらかじめ次の項目へ「戻す日時」を設定してください。
- キャンペーン予算
- ターゲティング入札額
- 掲載枠の入札額調整
- 自動増額・予算ルール
- 一時的に追加したキャンペーン
広告売上だけでなく総売上と自然検索順位を確認する
ビッグセールの評価は、セール期間中のACOSだけでは不十分です。次の期間を分けて比較します。
- セール前7〜14日
- セール期間
- セール後7〜14日
セール後に自然検索順位や総売上が維持・上昇していれば、広告投資がその後の売上基盤づくりにも寄与した可能性があります。
次回の予算計画に使う実績を残す
次回の予算計画に使えるよう、商品別・キャンペーン別に実績を残します。
| 記録項目 | 例 |
|---|---|
| 通常時予算 | 10,000円/日 |
| セール時予算 | 17,000円/日 |
| 最大消化額 | 15,800円/日 |
| 予算切れ時刻 | 18時30分 |
| CPC上昇率 | 通常比1.35倍 |
| セール中TACOS | 9.2% |
| セール後TACOS | 6.8% |
| 粗利 | 商品別に記録 |
| 自然検索順位 | セール前・中・後で比較 |
Amazonビッグセール広告運用チェックリスト
<!– 画像挿入位置:「Amazonビッグセール広告運用チェックリスト」の見出し直下/画像:03-sale-operation-timeline.png/内容:セール前・中・後の運用タイムライン –>
セール前
- セール対象商品と値引き率を確定した
- 在庫数と補充予定を確認した
- 通常時の売上・広告費・TACOS・粗利を集計した
- セール中の販売個数を3シナリオで予測した
- 値引き後の総売上高から広告予算上限を計算した
- 攻めの型・守りの型を決めた
- キャンペーンごとの予算配分を決めた
- 予算・入札額・掲載枠調整を設定した
- 設定を通常値へ戻す日時と担当者を決めた
セール中
- 主要キーワードの掲載位置を確認した
- 予算切れの時刻を確認した
- 在庫切れ・カート未獲得がないか確認した
- CPC・広告売上・総売上・TACOS・粗利を確認した
- 成果の高いキャンペーンへ予算を再配分した
- 採算の悪いターゲティングを調整した
セール後
- 増額した予算と入札額を通常値へ戻した
- 掲載枠調整と自動増額設定を見直した
- セール前・中・後の実績を比較した
- 自然検索順位と総売上の変化を確認した
- 次回用の予算倍率・CPC上昇率・販売予測精度を記録した
Amazonビッグセールの広告運用は運用代行・コンサルへの相談もおすすめ
Amazonのビッグセールでは、通常時より広告費やクリック単価が変動しやすく、売上だけでなくTACOSや粗利、在庫数を踏まえた予算設計が必要です。さらに、セール期間中は予算切れや掲載位置を確認しながら、入札額やキャンペーン予算を調整する対応も求められます。
自社だけで予算設計や日々の調整を行うのが難しい場合は、Amazon運用代行・コンサルの活用も選択肢の一つです。広告運用だけでなく、商品ページや価格、在庫を含めた店舗全体の改善についても相談できます。
ビッグセールに向けた広告予算の決め方や運用方法にお悩みの場合は、しるし株式会社の無料相談をご活用ください。現在の運用状況を確認しながら、自社に合った販売戦略について相談できます。
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Amazon Adsパートナーとは?|Amazon公式
しるしを支えるスペシャリストとAmazonとのパートナーシップをお客さまの課題解決に最大限に活用し、専門性の高いサポートで商品・ブランドがもつポテンシャルを引き出し、ショップの成長を実現いたします。
しるしの強み② EC運用をまるっとおまかせ!売上・粗利UPと工数削減の実績
EC・ネットショップの運営代行やコンサルティングでは、ひとりの担当者が運用する体制が多いですが、しるしでは、元Amazon社員や大手広告代理店、メーカー出身者などが在籍し、各領域のプロで結成されたグロースチームによるチーム体制で支援させていただきます。

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吉原 香奈
Amazon専任コンサルタント
大学卒業後、大手インターネット広告代理店に入社し、デジタル広告運用の最前線で実務経験を積み、データドリブンな戦略立案と分析スキルを習得。その後、しるし株式会社に入社し、Amazon事業部にて化粧品・ヘアケア・食品・家電・医療用品など幅広いカテゴリのブランドのECモール運用を担当。2025年よりAmazonチームのマネージャーとして、戦略設計から施策の立案・実行までをリードし、ブランド価値の最大化にコミット。

監修者
吉原 香奈
Amazon専任コンサルタント
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